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お父さん、ごめんね。: いつかきっとドットコム

お父さん、ごめんね。

2014年05月14日


【2014.05.12 04:30am】

あの日以来、
久しぶりに夜明けの写真を撮った。

なんでかな、あの日以来
夜明けの写真が撮れずにいた。




これはフェイスブックにアップした
父にとって最後の日になった夜明けの写真。

おはよう、新しい朝。
どこかのリゾートにでも
滞在してるかと
錯覚してしまうよな
きれいな霧の朝でした。

家族の写真というものは
意図せずとも
大切なものが写るんだなぁ。

なんてことを書いている。
最後の日になることを
知ってたんだろかこの日の私は。




父に付き添う日のランチ時には、
近所のファミレスや院内のコンビニに
息抜きもかねて行っていたのだけれど、
この日はベッドサイドを離れちゃいけない気がして
ずっと病室で過ごしてた。

でも、父の状態はとても安定していて、
規則正しい寝息を聞いている以外は
なにもすることがなくて暇だった。

前日まではこちらからの問いかけにも
うなづいたり首を振ったりするなどして
コミュニケーションがとれていたけれど、
この日、父は穏やかに眠ってるように見えるものの
私の声に反応することはなくなっていた。

点滴の交換にやってきた看護師さんが
「今日は外、温かいんですよ~」って。

そうか、外は温かいのか。
お父さん、外は温かいんだって。
ももひきの季節も終わりだね。
1枚ちょうだいね、って語りかけて
チョキチョキ作ったプランツハンガー。

「出先でハサミは使うな!って叱れちゃうね」
って、話しかけたけど、お父さん寝てたね。
しょうがないからブツブツとひとりごと言って
チョキチョキしたんだよ。



父は4度の危篤状態に陥った。
担当医から「その時」について
何度か詳しく説明されてたし、
私はどんなに急いでも病院までは
4~5時間かかるから、
もしも「その時」に間に合わなくても
仕方がないのだと、
心の準備と覚悟はできていた。

できていた、と思っていたんだけど。
その度ごとにやっぱり慌てた・・・。

最初の危篤の報を受けた時には、
バッグに辛子のチューブが入ってたし、
家に戻った直後にまた危篤の連絡が入った夜は
疲れてもう動けないと思ったけど、
翌朝になって5時の始発に飛び乗ってたり。
落ち着け落ち着けと言いながら、
病院に向かうフレッシュひたちの中で
いつもキモチが全力疾走していた。




「ポックリ死にたい」

よくそんなことを言う人がいるけれど、
残る側としては、それはやだなぁと思う。
確かに父の付き添いは大変だったけど、
あの時間がなかったら、きっと、もっと
よけいにつらかったんじゃないかな。

「死んだらおしまい」

そんなこともよく聞くけれど、
父の存在は死んでもおしまいじゃなかった。
なんていうのかな、たくさんの父の言葉が
私の体の中で細胞として生きている、そんな感じ。
おしまいどころか、生きてる時より鮮明に感じてる。




「いいことも悪いことも全部隠さず教えろよ」

父から何度もそう言われていたものの、
残り少なった時間の量だけは
伝えることができなかった。

亡くなる10日前に病室で盛大に行われた
父の87歳のバースディーパーティ。
パーティーの締めに
父からみんなへ語った言葉は、
私たち4人の娘や
その子どもたち(孫ーズ)ひとり一人が
父の自慢の種だったというもの。

はっきりと、しっかりと。
その口調から余命幾ばくもないなんて
誰も信じてなかったし、誰よりなにより
父本人が思ってなかったみたいだし。

だけど、「その時」はやってきた。

それ以来、悲しいとか、気が沈んでるとか、
そういうんじゃなくて、
父にほんとのことを伝えることができなかった、
父に嘘をついてしまったという
贖罪の思いが私の中でいつも燻っていた。





【2014.05.14 04:31am】

父にはもう新しい朝は来ないんだなぁ。
そう思うと朝焼けの写真が撮れなかった。
大好きなだけに、よけいに撮れなかった。

でも、思えば私は、
父の最後の時に「いってらっしゃい」と
明るくそう言って見送れたじゃないか。
泣き笑いしながらも、
ちゃんと見送れたじゃないか。

今ごろはきっと、
迎えに来ていたおじいちゃんと一緒に
愉快に楽しく大酒を飲んでるに違いない。

そんな風に思ったら、
少しだけ贖罪のキモチが晴れて
朝焼けの写真が撮れた。

お父さん、ほんとのこと言えなくてごめんね。
お父さん、今朝の空もきれいだよ。
そう言いながらシャッターを押してた。

毎日いろんなことがあるけれど、
いいことも悪いことも起こるけれど、
「あや、だいじょうぶだから」という
父の声が聞こえてくる。
だいじょうぶ大明神がいる限り、
なんかもう、私の人生なにもかもが
だいじょうぶだ、そんな気がしてくる。

お父さん、ごめんね。
お父さん、ありがとう。
お父さん、だいじょうぶだから。
お父さん、みんな元気にやってるから安心してね。



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